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高千穂峰ふたたび・栗野岳と南洲館の泥湯(後篇)

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栗野岳は霧島連山の西端に位置している。えびの高原から西に延びる、鹿児島宮崎の県境のラインに沿って尾根の続く先の、ぽつんと外れた位置に在る。壮麗な霧島連山を概観してみると、瑣末な存在のように見えるが、韓国岳などの新期霧島火山が形成されたのがおよそ二万年前であるのに対して、栗野岳を含める古期霧島火山の形成期は十万年から三十万年前と云うから、古さのスケールが違う。古いから偉いなどとは勿論考えないけれども、敬意を表しつつ、一度は登ってみたい山である。

公共交通機関での登山口へのアプローチを考える場合、鉄道の肥薩線に栗野駅が在り、其処からは鹿児島県姶良郡湧水町のコミュニティバスを利用できるものの、本数は限られている。レンタカーで移動できる今回は、訪問のチャンスであり、麓には西郷隆盛も湯治で滞留したと云う栗野岳温泉が在るので、此れも是非入湯してみたい。

Kurino

2018/7/23

栗野岳温泉・南洲館(7:20)---展望台登山口(7:40)---枕木階段登山口(7:43)---展望所(7:53)---P1(8:25)---P2(8:35)---見晴台P3(8:45)---栗野岳二峰P4(9:00)---栗野岳(9:20)---温泉側登山口(9:50)---栗野岳温泉・南洲館(10:00)

「道の駅霧島」駐車場での車中泊は、半醒半睡の儘夜明けを迎えた。好天の夜明けであることを認識すると、寝不足の筈だが不思議にも疲労感は無かった。丸尾に戻り、コンビニで朝食を済ませてから、トヨタヴィッツを湧水町方面に走らせる。山間の道路が延々と続き、爽快な朝の空気を車内に入れる。平日の朝の午前六時台である。東京の職場の人たちは、もう起きている頃かな、などと云う想念が浮かぶ。其れで自分が、とても優雅な非日常的空間に居るのだな、と云う気持ちになる。

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霧島アートの森の広大な敷地を過ぎて、高原道路の趣になる。既に目的の栗野岳は右手に聳えているが、下山後の入湯を考慮して、車を栗野岳温泉、南洲館で駐車し、身支度を整えてから、来た道を徒歩で戻る格好となる。栗野岳は概ね四つのピークから成る山塊で、其のうちの三ヶ所を経由して周回できる登山道が整備されていて、スタートとゴールを二ヶ所に設定できる。霧島アートの森側からは、「日本一の枕木階段」と名づけられた登山口が在り、栗野岳温泉側の登山口は、鬱蒼とした植林帯に在る。下山して長い車道歩きは詰まらないので、枕木階段から登り、南洲館に近い処に下山すると云うことにした。

既に標高700mを越える位置にある車道から、西側に大展望が広がっている。眼下に広がる里山の連なりの上に、薄い雲海が浮かんでいるのを、見おろしながら歩いている。麓には朝靄がたなびいていて、高原道路は雲上の世界である。展望台、とされる箇所から、栗野岳登山道と云う道標が出現するが、此れは栗野岳レクリエーションセンター内の遊歩道のような踏路で、私が向かっている枕木階段登山道と、結局は合流する。栗野と水俣を結んでいた山野線は、国鉄分割民営化後の僅か一年で全線が廃止されたローカル線で、其の枕木を再利用して設えた階段が、栗野岳に向かって真直ぐに伸びている。

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枕木階段は歩幅が広くとってあり、勾配を緩やかに登ることができた。凡そ十分で561段を登り終え、木製の立派な展望台の上に立つ。青空の向こうに広がる地平線は茫洋としていて鮮明でないが、素晴らしい眺望であることは間違いない。其れでも、お膳立てして貰った眺望と云うのは、陰翳も余韻も乏しいように感じられる。少々の休憩で、いよいよ登山道に入る。樹林帯を北に方向を変えて、尾根の上に登り詰める。途上に在る等高線の閉じた1029m地点に達すると、P-1と云う山名標が設置してあった。手製だがしっかりした作りなので、官製のように見える。同様のものは、此の後の行程で通過するピークの各箇所に、順次設置されていた。

霧島連山西端を構成する栗野岳の稜線は、自然林に覆われた、よく整備された登山道を歩く行程であった。南西から登って来る尾根と合流するP-2を過ぎて、分岐を右に折れると視界が唐突に開けて、其処が見晴台の1069mピークだった。枕木階段側の青空から打って変わって、周囲は霧に覆われている。本来であれば、えびの高原の山稜と韓国岳を展望できる場所だが、緑に覆われた山なみの形状は輪郭が判然としない。霧が流れて空の隙間に青空が覗くと、眼下に白煙を噴出させている大霧発電所が出現した。地熱発電所の煙が、其の儘周囲の雲と同化して、空中に蔓延させているような錯覚に陥る。

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登山道に復帰して、踏路が勾配に変わると、やがてロープが設置されている岩場を登るようになる。程無くしてふたたび視界が開ける平坦地が、栗野岳2峰の1094.2mピークだった。陽差しは差し込んでいるが、対面に聳えている筈の韓国岳は、相変わらず雲に覆い隠されていた。

樹林帯の稜線を歩き、分岐点を右に。此の山塊の最高峰である、1102mの栗野岳頂上は樹林に覆われた狭い場所で、登頂の感興は全く湧かない場所だった。此の儘北上すると、1087.7mの三角点の在るピークに至る筈だが、踏路は藪に覆われて確認出来なかった。西北にも尾根が在り、下降していけば、火山である栗野岳の象徴的な場所である、八幡大地獄に至る筈で、昔は登山道が在ったようだが、此れも不明瞭であった。

登山道に戻り、一路栗野岳温泉に向かって下山を開始した。登山地図に、桜島が見えると記されている、第一展望台は植物が繁茂して何も見えなかった。ところで、私の手にしている、昭文社刊、山と高原地図「霧島・開聞岳2013年度版」は、登山コースを示す赤い実線が出鱈目と云っていいくらいに誤って記されているのが、実際に歩いて明らかになった。枕木階段から尾根に至る筈の線が、トラバースになっていたり、栗野岳2峰から頂上に至るルートも、同様に稜線を外れているのと、驚くべきは栗野岳温泉側の登山口の位置が間違っていて、尾根を挟んで反対側の北側に記されている。現在の改訂版が修正されていればいいのだが、此処迄間違いが積み上げられるように記載されているのは珍しい。尤も、地形を把握せずに、単純に線を辿るハイカーには無用の問題かもしれないけれど。

温泉側登山口の車道に下る道は、鬱蒼とした植林帯だったので、下山路に選んだのは正解であった。レンタカーに帰還して、入湯の準備に掛かる。栗野岳温泉の一軒宿、南洲館は古びているが大きな木造建築で、いかにも湯治場といった風情だった。桜湯、竹の湯と、天然サウナ状態の蒸し湯があり、愛好家は全てに入湯するようである。私は三種類の湯に入ることに執着はしていない。蒸し湯は興味が無いことも無いが、浴後に麦酒が飲めないのであれば無用である。宿の方によると、桜湯は改修工事中で入れないと云うことだったので、竹の湯に入湯した。

小さな小屋の中に、石造りの浴槽があり、湯は灰色に茶褐色が混ざったような感じで濁っていた。石壁の反対側は打たせ湯専用のスペースで、頭上から落ちてくる湯に打たれる。泥湯に浸かり、また打たせ湯に、と繰り返して、一時間くらいのんびりと入り浸った。予定通りに下山できたので、入湯を終えても未だ充分に時間がある。南洲館の庭園を見物していると、八幡地獄は見てきたの、と宿の女性に声を掛けられた。長湯で放心状態になっていたのだろうか、重要な景勝地のことを、すっかり忘れていたのであった。

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追記

噴気孔の集合体としては九州で最も規模が大きいと云う八幡大地獄は、木道で周回できるようになっていた。規模の大きさは計り知れないが、箱根の大涌谷のように、遠目から見物するのではなく、噴気孔の中に入り込んでいるので迫力があり、長居するような気分にもならないので直ぐに引き返した。

レンタカー返却時刻にかなり余裕がある行程で空港に近づいてきたので、嘉例川駅に立ち寄る。地元自治体が買収し管理保護している開業明治36年以来の駅舎は、風情があった。トヨタヴィッツを無事返却し、溝辺鹿児島空港内の山形屋レストランで、名物の皿饂飩を酒肴に待望の生麦酒を飲んだ。


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