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鳥屋山北尾根・斧窪御前山

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倉岳山の北東尾根を登ってから、次はどうしようかと思案しつつ、高尾駅から中央本線の普通電車に乗車した。倉岳山周辺の地形図を携行して、目的を定めない儘出掛けてしまった。日常の些事に、気持ちが塞いでいる。其れが澱のようになって、身体の奥底に溜まっているような気がする。そんな心裡の儘、動き出した車窓を眺めると、昨日都心でも降った雪で、山々が薄っすら白く染まっていた。

電車が上野原を過ぎて隧道を越えると、陽光が山々の北面に遮られて暗い車窓に変わる。四方津を発車して、梁川駅に近づくと、風景はふたたび、朝陽が眩しい雪景色となった。御馴染みの梁川駅が、今朝は別世界のように美しい。そう思った瞬間、鳥沢駅から下畑集落方面に歩いて、倉岳山北尾根を登る、と云う具体案を考えていた私は、急遽梁川駅に下車することにした。

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2017/2/10
梁川駅(8:30)---唐栗橋(8:40)---取付き点(8:50)---686mピーク(9:55)---鳥屋山(10:20)---細野山(11:40)---立野峠(11:50)---梁川駅(13:00)

梁川駅に降り立ち、プラットホームから、雪化粧をした三角錐の斧窪御前山を眺める。視線を左手に移すと、倉岳山に続く尾根の前衛である493mピークが、此れも白い綿に包まれたようになってこんもりと立っている。快晴の青空を背景にした倉岳山を見上げて、さあどうするかと黙考する。そこで、本日の行程を、未踏の鳥屋山北尾根を登ることに決めた。

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鳥屋山は、高柄山から倉岳山に続く、桂川南岸に連なる山々の途上に在る。昭文社の登山地図には「トヤ山」と記載されている。過去には倉岳山から寺下峠経由で下山する時に、通過したことがあり、其の時の感想は、存外に長い行程だったと云う思い出しか無い。其れを北面の尾根から直登しようと云うのが主題である。

トタン沢橋を渡って舗装路の勾配を登り、相変わらずの倉岳山登山口に達した。其の儘舗装路を進んでいくと、周囲の光景は薄暗い雪の谷となっていく。林道富士東部線は尾根に突き当たると、抗うことなく旋回して尾根を捲いていく。路面が凍りついた唐栗橋を渡り、鳥屋山北尾根の取り付きを探す。松浦隆康著「静かなる尾根歩き」の記述を頼りに、「彦田359」の電柱を探し、其の付近に落ちている尾根の緩やかな勾配を伺うと、微かな踏跡を確認した。

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薄暗い笹薮の斜面を登って、程無く支尾根の上に立つ。木々に積もった雪が、強烈な陽光に照らされている。唐突に浴びる光に眩暈を覚えそうになりながら、歩を進めていくと、粉雪が舞うようにして周囲を覆っている。凍てついた樹林に積もった雪は、此の陽差しで、急速に溶けていくのだろう。暗い影になっていた谷間にも徐々に陽が差し込んで、誰も居ない雪の山道が、いよいよ明瞭になっていった。

斜面を登り、行き着く先を見上げると、青空が樹林越しに広がる。鳥屋山北尾根の478mピークに立つと、月尾根沢を挟んで、正面に倉岳山が聳えている。登り始めてから程無くの眺望は、此れ迄の月尾根沢経由の倉岳山登山では考えられない展開である。鳥屋山北尾根の愉しみを甘受した恰好であった。

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標高600mを越えて、北東からの尾根が合流し、積雪は徐々に深くなっていった。行く手を遮る倒木に積もる雪を払って、其れを越えていく。急勾配になり、高度が上がると、背後に百蔵山と葛野川の谷が遠望できるようになったので、自分が南東に向かって登っていることに気付く。松浦本の記述通り、恩賜林石標が、間隔を狭めて頻繁に出現するようになった。恩石標385の在る標高686m点に到達すると、太陽は中天に近くなって、積雪の尾根を照らしていた。

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相変わらずの倉岳山が、稜線の奥に聳えている。鳥屋山、細野山と続く稜線に、程近くなってきていることが判る。鳥屋山北尾根は、686m地点から巨岩が遮る急峻となり、トラロープが設置されている。深雪を喘ぎながら登りきると、呆気なく縦走路の途上にある鳥屋山に到着した。支尾根に取り付いてから、一時間半が経過していた。前回の倉岳山北東尾根よりも、一時間も早い。標高808mの鳥屋山と、990.1mの倉岳山を比較するのは違うのだが、僅かな時間で山上に立てるのは嬉しい。

近隣の舟山、細野山に挟まれた鳥屋山は、其れ等よりも低いので、漠然と稜線の合間に居ると云う感慨に包まれる。此処から倉岳山を目指すのが本来在るべき行程だと思うが、私は既に、立野峠から下山しようと云う考えに落ち着いていた。大好きな月尾根沢を、二回続けて素通りする訳にはいかない。そんな思いと、倉岳山迄、更に登り続けるのが億劫になっている自分にも気付いていた。

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山歩きを愉しんでも、澱んだ日常の疲れから、完全に脱することができていない。私は、自問自答を内心で呟きながら、細野山方面に歩き出していた。小さな瘤を幾度か越えて、秋山の集落を見下ろせる箇所に掛かった。中央本線沿線は青空の広がる好天なのに、秋山郷は鉛色の雲に覆われて、何処迄も暗い。其の景色は、自分の心裡に共感を与えて呉れる。私は立ち止まり、暗雲の中で雪に埋もれそうな山里の風景を、放心したような気持ちで、何時迄も眺めていた。


追記

2017/2/20
梁川駅(10:30)---斧窪御前山(11:30)---4号鉄塔---ヨソ木山---39号鉄塔---大田峠手前で迷い、北西方面尾根を下る---梁川駅(14:00)

Onokubogozenyama

出発が遅くなって、取り敢えず梁川迄。駅から眺めるだけであった斧窪御前山に登る。中央本線を隧道手前で潜り、南面の登山口には古びた道標が在った。鳥居と社を通過してから尾根を直登し、呆気なく頂上に達した。テレビアンテナの在るピークからは、四方津方面に続く山並みの風景が見渡せた。松浦本のコピーを参考にしながら、北西方面の尾根を目指すが、笹薮が深くなり、強風が凄まじく、難渋して下降した。4号鉄塔を確認して、少し引き返して不明瞭な尾根分岐を探し、中央自動車道が貫く隧道の上を横断していく。送電線に併行して続く尾根を辿って、ヨソ木山に立つと、犬目や扇山が程近いのを実感させた。ゴルフ場を左手に、細い尾根を大田峠方面に進む。歩き易い尾根の分岐が断続的に現われ、二度程迷い込みそうになって引き返した。大田峠に近づいていくと、周囲は起伏の無い尾根が集合して、地形が判別できなくなる。結局、緩やかな尾根に見当をつけて無理矢理下降した。椎茸栽培の原木が積んである場所に降り立ち、作業道を歩くと、程無く大田峠方面の登山道に合流した。

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