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明星ヶ岳・塔ノ峰「箱根登山詳細図」踏査隊と歩く。

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「諸戸尾根から梅ノ木尾根。相州大山を踏査隊有志と登る」の時以来、約二年ぶりにMD氏率いる「登山詳細図」踏査隊に参加した。粛々と進捗している箱根図の踏査エリアの、残存部分を消化していく計画である。そのような訳で、折角箱根迄やってきたが、登る目的地は明星ヶ岳であり、其処から早くも外輪山を下山して塔ノ峰を目指すと云う行程である。枝葉末節と云っては失礼になるかもしれないが、そんな区間を歩くことになった。塔ノ峰は立派そうな山名だが、箱根湯本駅、塔ノ沢温泉の北方に立つ標高566.3メートルの里山である。余りにも地味で、此れ迄訪れようと考えたこともない。そのような山に登ることができるのも、踏査の必然性あればこそであり、僥倖に感謝しなければならない。

2016/12/25
宮城野橋バス停(9:10)---大文字(10:05)---明神ヶ岳手前の鞍部(11:00)---明星ヶ岳(11:30)---塔ノ峰(14:35)---風祭駅(16:25)

A

小田原駅からバスに揺られ、私とNZ氏、そしてYMさんの三人が宮城野橋で下車した。宮城野と仙石原の境に在る碓氷峠周辺を踏査するために、MD氏、HSさんのふたりが乗った儘のバスを見送り、我々は冬枯れの別荘地の舗道を登り始めた。

明星ヶ岳は「明神ヶ岳・大涌谷の眺望」の時に立ち寄ったので、広い山頂域の東端に在る、眺望の無い古びた鳥居の山名標地点を記憶している。詰まらない山頂だったが、下山に掛かって直ぐに到達する大文字からの眺望が素晴らしかった。其の景色の御褒美を目当てに、別荘地を通る舗道が閑散としてくる辺りに在る登山口から、実直なジグザグの山道を辿り始めた。

御馴染みのNZ氏を真ん中に、私は最後尾に付いて歩いていく。一緒に本格的な登山道を歩くのは初めてのような気がする先頭のYMさんは健脚で、休むことなく登り続けている。次第にNZ氏と私の呼吸が荒くなり、YMさんに引き離されないように、少し無理をして歩くようになった。石橋を叩いて渡るタイプ(と私が勝手に推察している)のNZ氏は、今回もザックが重そうであった。

B

ハイペースに引っ張られて、周囲は次第に雑木の枯木が目立ち始める。其の鞘越しに風景が広がり、富士山の白い頭が遠くに望めて、呆気なく大文字に登りついた。強羅の坂をケーブルカーの軌道が一直線に続いていて、其の先には早雲地獄がぱっくりと亀裂を広げているのを正面に眺める。夥しい数の建造物が密集して、山腹を形成している。ハイキングコースが規制されて立入禁止の早雲山を含めた中央火口丘だが、ひとたび大噴火が起こったらとんでもないことになるであろうと云うことが一目瞭然である。

そんな圧倒的な風景を堪能して、紫煙を燻らせている私だったが、YMさんは直ぐに登山を開始しそうな気配だった。休憩しないのかと訊くと、休むと身体が冷えるから、と云い、先に行っている旨を告げて去っていった。NZ氏も後を追っていったので、私も仕方なく出発することにする。ザックを背負って大文字の上のトラバース道を進んで、切り返すともう景色とはお別れであるから、何度も振り返ってしまう。文字通り、後ろ髪を引かれながらの再スタートであった。

C

程無く箱根外輪山の稜線に乗って、踏査の予定は明神ヶ岳手前の鞍部、標高913m地点迄を往復して明星ヶ岳に戻る。穏やかな冬空で、富士山は静かに姿を大きくしていく。途中で会ったのは、子供をひとり連れた若い夫婦だけであった。クリスマスに冬の低山歩きとは風情のある親子だが、子供は既に疲れた顔をしていて、明神ヶ岳迄行けるのかと思うが、復路にふたたび擦れ違った頃は、母親の方が子供を担いで歩いていた。屈強な妻の後ろから、小柄な夫が付いて歩いていく不思議な光景を見送り、我々は来た道を戻って、明星ヶ岳に着いても未だ誰も居ない。

三人でそれぞれが食事を摂っているところに、MD氏とHSさんが到着して、後は小田原駅で別れ、和留沢行きバスに乗ったIH氏とTMさんを待つばかりだが、予定の時刻を過ぎても到着しないので、暫く待つことになった。ベテランのふたりは三十分以上遅れて到着したが、疲労の色は無かった。「奥和留沢みはらしコース」に就いて、見晴らしなんて全然無かったわよ、とTMさんが呆れたように云った。途中で食事を済ませたと云うので、其の儘総勢七名で塔ノ峰を目指して歩く。

箱根外輪山の東端の道は次第に高度を下げて、周囲の風景は徐々に植林の目立つ里山の風情になる。大勢居るので、ロードメジャーを転がすのはTMさんだが、バックアップの意義で私も転がして歩いている。其れで、計測ポイントで距離を相互に確認するのだが、私の計測した数値が、TMさんのよりも数十メートル以上も多い。しっかりと地面に着けて、段差で空転しないようにしなきゃ駄目よ、と、TMさんに叱られる。以後、ロードメジャーの空転が気になって、碌に周囲を眺めながら歩くことができなくなった。標高700メートルを通過して、登山道が急激に南下して支尾根に入る頃には誤差が僅少になって、とうとう五メートル以下になった。TMさんが、まあいいだろう、と云うような顔で首肯している。

D

支尾根の登山道に、足柄幹線林道が交差して、暫く立派な舗装路を歩く。MD氏が、国道一号を迂回してくる車が飛ばしてくるので注意するように、と云った。IHさんと喋りながら歩いていると、後方から轟音を立ててポルシェが走ってきたので道端に避けて見送った。すると、見通しの無いカーブの先からタクシーが現われて、IHさんがうわっと声を上げた。ポルシェは急ブレーキを掛けて停まった。MD氏の忠告通りの、危険極まりない林道歩きであった。

舗装路が大きく右に旋回して、左手から尾根が合流してくる。足柄幹線林道は其の尾根を乗り越えて、小田原方面に去っていく。明星ヶ岳から続いている尾根を外れて、高速林道を迂回してきたが、ふたたび合流して、此処から最後の塔ノ峰に続く登りが始まる。整備された木段を登り、緩やかな傾斜を歩いていくと、存外に素晴らしい眺望が北面に広がった。全員が足を止めて休憩する。枯れ芒に黄昏色の陽光が当たっている先に、顕著な三角錐の大山を目印に、丹沢山塊が青空の下で連なっているのを見渡す。年の瀬の陽が落ちるのは早いだろう。皆さん申し訳ないですが、とMD氏が予定時刻を遵守するための出発を提案した。

E

良景の地点から直ぐに、樹林に囲まれた平坦地に到着した。暮色の漂う地味な塔ノ峰山頂に、踏査隊が大挙して登頂したので、賑やかになった。皆が距離を記したり、GPS機器を操作したりして忙しい。此処から二手に分かれて、踏査隊は登山鉄道沿いに下山して計測する。私を含む出発時の三人は、東北東の尾根を歩いて、風祭駅を目指すことになっている。MD氏のグループは、阿弥陀寺を経由して塔ノ沢温泉に向かう。

女性の数が多い所為か、皆が最後の山頂でお喋りに興じているから、MDさんは少し焦った感じで、時計を確認している。暫くの間合いで、皆さん申し訳ありませんが、と云う声。其れで皆が整然とMD氏に注目した。そして、二手に分かれた踏査隊が、塔ノ峰から下山を開始した。


追記

風祭駅に到達してやってきた電車に、丁度良くMD氏一行が乗り合わせていた。其の儘本日の忘年会の会場である町田に向かった。翌日が早立ちのIH氏が欠席すると云うので、皆で麦酒一杯だけでも、と誘うと、IHさんはかなり逡巡していたようであった。町田の居酒屋に、本日の踏査隊と、世話人氏以下、御馴染みのメンバーが集合して、酒宴が開催された。呑み放題コースに地酒が無いことが判明して一部隊員が騒然となるが、YMさんが見事な交渉を行ない、地元の銘酒「相模灘」を堪能することができて、満悦の夜が更けていった

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