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2015年4月

石神入林道から青梅丘陵

なだらかな尾根が幾重も落ちている沢沿いの道は、木漏れ陽が差し込んでいて明るかった。石神入林道は植林のスギが立ち並ぶ凡庸な作業道である。しかし、私はJR青梅線の石神前駅の程近くから入り込む青梅丘陵へのアプローチが、何故だか最も気に入っている。手押し車に木端を積んでロープを掛けている初老の男性に挨拶して先を進むと、蛇行する石神入を渡る古びた石橋が在る。沢の向こうに苔むした祠が鎮座しているのが見える。青梅街道の騒音も、鉄道の響音からも完全に遠ざかって、山の懐に入り込んだ気分になっているが、未だ十数分しか歩いていない。からくり仕掛けの襖の裏側に、唐突に消え去る忍者のように、私は人里から姿を消して山間の谷を歩いている。其れが何とも云えない心地好い気分にさせて呉れる。


Ome_yaguradai

2015/4/16

石神前駅(12:00)-----石神入林道-----青梅丘陵ハイキングコース-----矢倉台-----宮ノ平駅(14:20)

地形図の破線で記されている林道の、最初に現われる分岐点には官製の道標が立っている。沢が合流する二俣の地点である。道標は右手に誘っているが、左手と云うか、直進して沢を詰めても、標高359m地点の在る尾根に登って行く道が辿っている。其れは既知のことであって、好きなルートではあるのだが、時刻は既に正午を廻っている。時間を気にせず山歩きが出来ない身の上に内心で嘆息しながら、東方に進路を向けた。

勾配が徐々に上がっていくと、陽当たりのよい尾根の裾に自然林が疎らに現われてくる。重厚な樅の老木が右手の尾根に立っている。思わず立ち止まって眺めると、其の方角にハイキングコースと云う道標が立っていて、丸太で橋が渡してあった。青梅丘陵は登山地図では網羅しきれない程に登山道が巡っている。記憶に無い道標だったので、尾根に乗っていく其の登山道に歩を進めることにした。三角点の在る標高454mの三方山に続く尾根の東側を歩いて来たが、其の隣の尾根に乗ってしまうことになるから、登り始めだと云うのに青梅駅の方角へと逸れて行ってしまう恰好になった。

尾根の東側から急激に勾配を上げて、蛇行しながら続く登山道を登り続けると、先程迄そぞろ歩きのようにしていた石神入の谷間を見下ろすようになり、遠くに多摩川の対岸に在る山なみを望める程になった。廻り込むようにして尾根に乗り、巨大な樅の老木に辿り着いた。植林が密集している斜面に屹立して、斜上する枝ぶりを真下から見上げる。朽ち果てそうな様相の樹皮を、そっと撫でてみる。纏わりついている蔦も、ずっと前から寄り添っているかのように同化して古びている。

勾配を本格的に登り始めたなと思ったら、頭上に人影が見えた。登りきったら、其処はもう青梅丘陵のハイキングコースだった。平日の昼下がりに人影は無いが、時折トレラン姿が黙々と近づいてきて、走り去っていく。何度も歩いた道だが、随分久しぶりのような気がする。三方山を過ぎた辺りかと思うが、惰性の儘に、青梅方面に歩いて行くことにした。支尾根が縦横に派生する稜線上の登山道は、相変わらず植林帯の中を歩くので判然としないが、木段が登る処に差し掛かった先に、空の白い様子が窺えた。瘤状の小ピークに着くと古びた丸太のベンチが在り、風景が広がった。遠くに懐かしい上成木の都県境尾根が望まれる。広い谷を覆うようにして、殆ど散ってしまった山桜が立ち並んでいる。

茫然と紫煙を燻らせていると、高齢の男性がやってきた。山桜は、案外早く散ってしまうのですね、と話し掛けた。高齢氏は、奥多摩湖の方は未だこれからだったがなあ、と云った。そして、此の辺は何の変哲も無いように思うだろうけど、毎日歩いていると風景の変化が判るんだよ、と云った。青梅市内に住んでいる彼は、高尾山みたいに混んでいる山よりも、此の辺がいいよと、毎日歩いていると云う青梅丘陵を擁護するように話した。

高齢氏が去った後に、何人かのトレイルランナーが寡黙に通り過ぎて行った。私は其の儘茫洋とした感じで風景を眺めていたが、空腹のような気がしてきたのでカップ麺を作って食べた。雨天が続いて、漸く晴れた今日は、思ったよりも気温が高いようだった。汗ばんでいた私の躯に、心地好い風が吹き抜けていく。暑くも無く寒くも無く、程好い気候だった。此れで山桜が満開だったらと思うが、其れは強慾に過ぎるのだろうなとも思った。私は、緩慢に立ち上がり、標高点405mとの鞍部に下って、山桜の花弁が敷きつめられた道を、歩いていった。

Ishigamiiri

別記

2015/2/16

大倉バス停(10:30)-----大倉尾根-----塔ノ岳-----大倉尾根-----大倉バス停(16:45)

2015/3/8

西吾野駅(7:15)-----白山神社-----北川尾根-----飯盛峠-----飯盛山-----町屋敷-----白山神社-----西吾野駅(14:00)

2015/3/13

東吾野駅(7:00)-----天覚山-----種木橋-----東峠-----屋船山-----東吾野駅(13:30)

2015/4/12(東丹沢登山詳細図改訂版記念パーティ)

日影バス停-----萩原作業道-----一丁平-----小仏峠-----小仏バス停

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