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赤ぼっこを送電鉄塔巡視路から直登する。

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青梅市と日の出町の境界に連なる尾根の途上に在る、三等三角点が設置された小ピーク。赤ぼっこは麓から見て燦然と聳える山と云う訳では無いが、其の山頂からの眺めは雄大で、青梅市街から二俣尾迄、青梅丘陵を衝立にして多摩川が流れる風景を一望することができる。JR青梅線の宮ノ平駅から徒歩で一時間強にて到達できる場所とは思えない程の眺望である。和田橋を渡り、梅ヶ谷峠入口信号から側道に入り、要害山を経てから天狗岩に立ち寄り、赤ぼっこに至る、或いは秋川街道の天祖神社から旧二ツ塚峠を経て赤ぼっこに到達する、と云うのがコースとしては一般的と思われる。しかし、何度か訪れて顧みると、馬引沢林道をのんびりと歩いて、馬引沢峠経由で簡便に赤ぼっこへと至るコースが最も心地好いと云う気がして、気に入っている。

2015/1/6

宮ノ平駅(7:20)-----和田町一丁目-----馬引沢林道-----送電鉄塔青梅線31号巡視路-----赤ぼっこ-----四等三角点-----和田スポーツ広場方面道標-----馬引沢林道-----畑中-----青梅駅(13:00)


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風邪を引いて出掛けるのが億劫になってしまって随分経っていた。其れで一念発起して散歩がてらの山歩きをしようと思い立った昨年12月。既に時刻が正午に近いので、思い浮かんだ行く先が赤ぼっこだった。都心から青梅迄一時間半、其処から登り始めたので、赤ぼっこに立ったのは午後3時を過ぎていたが、冬の陽が傾き始める頃の眺望は何とも云えない趣があった。其の時歩いた馬引沢林道で、登山地図には記されない杣道のような踏路が幾つか分かれているのが目に付いた。其の中で、綺麗な道標がひとつ立っていたのだが、木片には何も記されていないのが気になった。林道から北西に向かって、低い尾根が蔓延するように隆起しているが、其の何処かの谷筋を無記名の道標が指している。いにしえの道が廃れたと推察するには、其の道標は随分新しいように見える。気になること夥しいが、罹患を逃れて間もない身に探訪を実行する気力は無い。新年を迎えてから改めて出直そうと思った。当然のことながらkz氏に誘いを掛けてみると、膝を打つような感じで興味を示して呉れた。

平日の朝の通勤ラッシュを避ける為、赤ぼっこに登るだけなのに宮ノ平駅に到着したのは午前7時だった。青梅街道から外れて和田橋に掛かった処で、山なみを眺める。あの目立つ山が赤ぼっこなのかな、とkz氏が呟く。あれは要害山、赤ぼっこは向こうです。此の山域に初めて訪れると云う彼に、私は珍しく教示の態度を取る。赤ぼっこのシンボルとも云える一本杉が、此の橋の上からはよく見える。勿論赤ぼっこからも明瞭に和田橋を見下ろすことができる。

和田橋を渡り終えて直ぐの信号を左折して住宅地の中を歩き、暫く経ってから現われる細い道を右折して吉野街道に合流する。横断歩道を渡ると馬引沢に沿って山道が分岐して、馬引沢峠と赤ぼっこを記した青梅市の道標が立っている。立派な門構えの旧家が在り、其れを過ぎると程無く伐採された丘陵が広がっている。其の上に神社がぽつんと建っているので立ち寄って参詣した。小さな社には八幡宮と書かれている。

「こんな掘立小屋然とした社に八幡宮とは大仰ですね」罰当たりなことを私が云うと、
「俺は初詣になるので丁度よかったよ」大雑把なことを善意に解釈したようにkz氏が云うのが可笑しかった。

馬引沢を渡って道なりに進んで、林道に合流する処にゲートが在った。なだらかな傾斜の林道を歩き続けていくと、吉野街道の騒音が遠ざかり、すっかり静かな道行きとなった。途中に出会った柴犬を連れたおじさんが、赤ぼっこへの道順を丁寧に教えて呉れる。林道を外れて謎の踏路を行く積もりである我々は、地元の人に不審の徒であることを覚られてはならない。おとなしくおじさんの説明を聞く振りをする。おじさんは、赤ぼっこの眺めは凄いんだ。360度じゃないが270度くらいの展望だ、と具体的に云って自慢した。我々は、ほほうと感心しながら御説を拝聴する。尾を振る犬は叩かれず、である。そんなことを考えながら足元を見ると、柴犬が不思議そうな顔で私を眺めている。

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林道が幾つかの橋を渡り、馬引沢が左手に流れてから少し経った頃、右手に青梅市製の道標が現われた。其の奥に、気になっていた無記名道標が在った。早速kz氏に検証して貰う。何も記されていないと思った木片には、文字が書かれていたのが剥げ落ちたのか、凹状の痕跡が在った。

「鳥岩か黒岩だな」kz氏が云う。
「なぜ」
「此の点々は黒か鳥しか無いよ!」

凝視してみると、確かに、よつてん或いは烈火と思われる部首、点々の痕跡が在ったが、黒か鳥と断定する根拠は無いようである。もうひとつの痕跡は更に手掛かりが判別し難いものだったが、岩ではないかと云うのがkz氏の推理であった。

地形図の赤ぼっこ周縁には、崖の印が散在している。岩の文字を拠り処とするならば、何れ急峻の崖に突き当たるのかもしれない。兎に角、謎の道標に従って、馬引沢林道の途中から右に逸れていくことになった。踏跡は谷沿いに続いており、枯枝の藪が随所に立ち塞がるので、安穏と歩き続けることはできない。馬引沢に合流する涸れた支流の右岸を歩いているが、やがて踏跡は曖昧になり、此れ以上谷筋を歩くことは困難な状況になっていった。左上には緩やかな尾根が在るのだが、藪状の様子は激化しているように見える。kz氏と私は立ち止まった儘顔を見合わせた。

尾根の上を歩くと云う気持ちは、お互いに湧いてこないようであった。尾根が収斂していく先は明らかに赤ぼっこの尾根である。どんな崖にぶつかるのかは判らないが、厳しい局面に晒されるのは明白のような気がした。確かなことは、謎の道標が形骸化したものであったと云うことだけである。我々は引き返すことにした。林道に戻り、道迷いを誘発しそうな無記名道標を引き抜いてしまいたい欲求に駆られたが止した。不審の徒らしき振舞いは自重せねばならない。

馬引沢峠に向かって歩を進めていくと、送電鉄塔への巡視路を示す黄色の杭が現われた。左手は標高365mピークの尾根に向かう道のようである。右手の杭の先には苔蒸した木橋が馬引沢に掛かっていた。此れは歩けるね。kz氏が安堵の声を漏らした。私は手にした奥多摩東部登山詳細図を広げた。等高線を確認したかったのだが、残念ながら詳細図の端に記載された赤ぼっこエリアは、馬引沢林道の途中で切れている。あと二センチ程度載っていれば、此れから歩く巡視路の尾根が判る筈なのだが、止むを得ない。

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踏跡は明瞭だった。縦横に広がっている尾根と沢筋の合間を縫うようにして、送電線への巡視路は続いていた。緩やかに谷筋の近くを登り、やがて大きな山肌に突き当たる。踏路は其の尾根をスイッチバックのようにジグザグに登っていく様相に転じていた。馬引沢林道の安穏とした歩きが常態となっていたので、貪欲に高度を稼いでいくジグザグの道が新鮮に感じる。植林帯を眼下に見るようになってきた頃、kz氏が感嘆の声を上げた。

陽陰になっている所為なのか、黒ずんで見える巨大な岩が正面に聳えていた。黒岩、と云う二文字が脳裡をよぎるが、勿論関係は無いのだろう。巨岩の裾を枯葉が敷きつめられていて、其れに忠実に急傾斜の進路が窺えた。岩を捲いて登りきると、木立の向こうに景色が広がった。赤ぼっこから送電鉄塔に延びる東尾根の上に乗ったことが判った。365mピークが既に見下ろせる位置に登りついていた。尾根が落ちていく先は激しい傾斜になっていて、踏み入るのは不可能かと察せられた。馬引沢林道が終点近くで大きく蛇行しているのは、今居る此の尾根の所為かもしれない。其の、馬引沢峠の方向には、明瞭に二ツ塚廃棄物処分場の塔が見える。興醒めてしまうところだが、此れも人間社会の所以であると考えれば、粛々と直視せざるを得ない。

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尾根道は巨岩の上に続いていた。休憩したばかりなので其の儘歩き続けて、間もなく送電鉄塔青梅線31号に到達した。昨年春に成木の都県境尾根を歩いた時、電線が外され、鉄塔だけが屹立している不思議な光景に出くわしたが、其れが廃止された送電線の青梅線だった。赤ぼっこ直下の鉄塔も、役目を終えた儘無為に屹立しているばかりである。其の南方面を眺めると、馬引沢峠からの登山道の途上に立つ鉄塔が覗ける。彼方の山なみは丹沢山塊迄見渡せるようだが、強い陽射しが逆光になっているので、霞んでいて何が何だか判然としない。鉄塔の周りを仔細に観察しているkz氏をぼんやり眺めながら、私は紫煙を燻らせて休憩した。

送電鉄塔に至り、漸く登山詳細図のエリアに戻ってきた。等高線を見ると、あとは緩やかな勾配を20mも登れば終点である。平坦な踏跡を辿り、間もなく一本杉が青空を背景に聳えているのが見えた。今日の天気予報は、午前中の曇りからやがて雨になると云うものだったが、嬉しい誤算である。標高409.5mの三等三角点、赤ぼっこは厳密には山頂とは云えない位置に在るが、相変わらずの絶景である。先程通過してきた鉄塔を眺める。電線の無い鉄塔が、ぽつりぽつりと青梅市街に向かって点在している。無用の長物が存在感を示してランドマークになっている。其れが却って不思議な趣を醸し出しているような気がした。

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追記

帰途は登山道を要害山方面に歩き、此れも気になっていた手製道標「平道入を経て和田スポーツ広場」の分岐を下る。殆ど消滅しかけている斜面のトラバース道を歩くと、四等三角点の在るピークから延びる北東の尾根に乗り上げた。其の儘尾根上を軽快に下り、途中の標高300m付近で北西に分岐するトラバース道に入るが、踏路は途中で消滅していた。尾根上に戻り、実直に下り続けて、標高250m付近で崖状になった。東側の緩やかな斜面を無理矢理下り、取水装置が設置された沢に降り立った。其の儘作業道が整備されているのを辿り、馬引沢林道に合流した。

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別記

2014年12月の山歩き。

2014/12/9
宮ノ平駅(13:20)-----和田町一丁目-----馬引沢林道-----馬引沢峠-----赤ぼっこ-----天狗岩-----要害山-----神明神社-----宮ノ平駅(16:00)

2014/12/15
梁川駅(8:40)-----月尾根沢-----立野峠-----倉岳山-----高畑山-----鳥沢駅(14:50)

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コメント

犬の鼻は誤魔化せなかったのかもしれないね~。
焼却場のフェンスって聞いただけで、行く気が失せましたよ。

あの謎の指導標は、いまだに気になります。
下からがダメなら上からという手もありますよね。
暇ができたら、赤ぼっこから先の尾根を下ってみたいものです。

和田スポーツ広場の道標は、謎のまま。
謎が多い山域ですね。

投稿: かず | 2015年1月27日 (火) 13時34分

謎を解くためには下降しかないですかね~。怖い(笑)
365m峰一帯も歩いてみたいですね。
無用の長物な鉄塔を訪ねる旅。
次の冬辺りには行きたいものですね。

投稿: 七目 | 2015年1月27日 (火) 22時02分

赤ぼっこを下ると(黄色の紐が目印)天狗の穴という大きな石の穴あり。神が住んでいるそうな。そこから馬引沢林道には行けるが道はない。

投稿: | 2015年3月24日 (火) 23時01分

コメントありがとうございます。
天狗の穴を示す札は確認しましたが、
先は崖っぽくて行かずじまいでした。
道無き道を林道迄はちょっと怖そうですね。

投稿: 七目 | 2015年3月25日 (水) 12時32分

その崖の下。つまり崖=巨大な岩なのです。話の種に挑戦してみてはいかがでしょうか。帰りは大変でしょうが戻ったほうが無難です。下っていいことと言えば巨大な山椒の木を発見したことかな。無記名の道標は昔は天狗岩と書いてありましたが今は廃道です。

投稿: | 2015年3月29日 (日) 20時53分

無記名道標に就いて、ありがとうございます。
天狗岩方面に抜ける谷沿いの道だったんでしょうか。
赤ぼっこ直下の岩、いつか訪れてみたいと思います。

投稿: 七目 | 2015年3月30日 (月) 07時33分

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