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鳩ノ巣城山・大楢峠・バットレスキャンプ場跡

Koizawa


2013/10/28

古里駅(7:50)---寸庭橋---大多摩ウォーキングトレイル道---坂下---JR古里線送電鉄塔6---JR古里線送電鉄塔5---城山---大楢峠---バットレスキャンプ場跡---坂下---寸庭橋---古里駅(12:50)

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肌寒くなり、早起きが辛くなってきていたが、台風一過の好天なので、未明に無理矢理出発した。しかし平日早朝の奥多摩方面は電車の接続が悪い。朝の五時半に都心を出発して、二時間以上も掛かって古里駅に着いた。車道を歩き、寸庭橋へと多摩川に向かって降りていく。此処も随分久しぶりである。大多摩ウォーキングトレイルの道標に従って、多摩川の上流沿いを歩いて行くと、やがて越沢の急流が音を立てて流れ出る処から、谷筋の山中の道になる。

越沢に寸庭川が合流する処は、普段から滝状なので豪快な瀬音なのだが、大雨続きが明けた今はもの凄い濠音である。遊歩道は滝と滝の間を通す橋が渡されている。連瀑の中間地点で、上の滝を見上げた。あまりの激しい流れに圧倒される。暫く越沢に沿って歩き、鉄五郎新道へと繋がる登り口を分ける。そして越沢を渡ったら尾根筋の登りに掛かる。こんな処にと思うが民家が一軒在り、其れを過ぎると、ひと登りで鳩ノ巣を見下ろす尾根の上に乗った。「奥多摩東部登山詳細図改訂版」には、何故か寸庭橋から坂下の東屋迄のルートが抜けているが、立派な登山道が健在である。次回の改訂版で加筆してほしい部分だと思う。

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久しぶりに訪れて大きく様変わりしていたのは、坂下から越沢に沿った山道が封鎖され、其の山腹の上部に、立派な林道が造成されていたことだった。未だ工事は途上にあるようで、周囲はトラロープが張り巡らされている。今日は此処から、未だ登ったことのない城山に向かう。本来なら鳩ノ巣駅から雲仙橋を渡り、坂下集落の入口から尾根に取り付くのが適当だが、古里附から歩いて来ると、送電鉄塔の巡視路がある東側から登るのが好都合である。此のルートは勿論「奥多摩東部登山詳細図改訂版」で初めて知ったものである。

真新しい林道から、尾根の上に向かって、擁壁のついでに作られたようなコンクリートの階段がある。崩落箇所発生の為立ち入り禁止の警告が書かれていたが、構わずに進入した。暫く尾根に張り付くようにして刻まれたジグザグの踏跡を辿る。尾根の上に出たら、北の方から延びて居る踏跡が交差してきた。標識があり、南方面に「御岳山・大楢峠」とあるから、林道へ合流する道であろう。巡視路は、尾根の上を真直ぐに続いている。

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道は想像以上に歩きやすく、緩やかに登り続けて、送電線JR古里線六番鉄塔に着いた。刈り払われた鉄塔の周囲は陽当たりが良く、其れ程着込んでいないので肌寒かった身体が暖まっていくのが心地よい。ふたたび樹林帯に入り、尾根が顕著になり傾斜が増す。標高600m付近で巨大な露岩が現われ、其れを避けて乗り上げると、鳩ノ巣からの尾根が一様に見渡せるようになった。其の山影に向かって我が鉄塔巡視路尾根は続いている。傾斜は厳しくなり、樹林が鬱蒼として周囲は薄暗くなってきた。

城山の姿が確認できるほど登り詰めた地点で、黄色い巡視路の標柱が北へと九十度曲がるように指示している。鳩ノ巣からの尾根上にある鉄塔を目指している道なので、大きく迂回することになるが止むを得ない。このトラバース道は心細くなるくらい脆弱だった。途中、朽ちかけた木橋がある。見るからに崩れそうな気配で、山肌を更にトラバースする踏跡がついている。其れを辿って谷を渡った。尾根に向かって続く道は、どんどん鳩ノ巣駅の方に向かっていくので、少し徒労感を覚える。

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漸く尾根に乗り、引き返すように南へ転換して尾根を登る。距離はあるが傾斜が緩いので快適な道だった。西の方には鋸尾根が聳えるのが樹間から見渡せる。程無くして城山の頂上に着いた。眺望は無い。山頂に、立てたポールから電気コードを張り巡らせている人が居た。アマチュア無線で交信する山登りの同好会に入っていると云うおじさんで、地形図に登頂記録が綿密に書かれているのを見せて呉れた。今日、人と会うのは貴殿が二人目ですと云うから、月曜日の朝に、この城山には三人の登山者が居たと云うことになる。好事魔多しと云う喩えは少し違うかもしれないが、私は鉄塔巡視路尾根の説明を、登山詳細図と共に熱弁した。おじさんは、詳細図に興味を抱いたようだった。

山頂を辞して、快適な稜線を歩く。休憩が長くなって、身体が冷えてきた。小楢峠、691mピークと、立て続けに休憩して、上坂からの道に合流してから、暫く歩き続け、全く久しぶりの大楢峠に着いた。シンボルである小楢の巨木には大きな亀裂が入っている。倒れる可能性があり危険だと云うことで、周辺がロープで囲われていた。この木が折れてしまうと、此の峠の感興が覚めてしまう。なんとか補強できないものかと思う。

時刻は未だ午前中だが、肌寒くて気分が減退してきたので、もう下山に掛かることにした。実直に降りるのも詰まらないので、以前訪問したことのある、廃止されたバットレスキャンプ場から、越沢バットレスの上に在る金比羅神社へ登り、眺望を楽しんでから下山しようと思いついた。越沢迄降りて、其れを越えてふたたび対面の山に登るから、大楢峠で退却する軟弱登山者の汚名を挽回できる。此れは自分の内面の問題で、意味不明の意地の張り方であるが、思いの儘に行動できるのが、単独行のよいところである。

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湿った登山道を足早に駆け下りて、越沢バットレスを眺める休憩所で一服した。此処から眺めると、広沢山と云うのが、随分雄大で立派な山に見える。キャンプ場の古びたプレートを見て、一気に石段を下る。モノレールの軌道まであるのに、此のキャンプ場の廃止は勿体無い限りである。越沢の畔に出たら、其処は急流の音が響き渡る、清涼な空気が充満している空間であった。深呼吸して、周囲を眺めた。対岸に渡って、けもの道コースの標識が指す矢印の方向に歩いていった。山肌にぶつかって、道は何処だろうと見回したが、藪状で何も見えなかった。

元来、キャンプ場の経営者が作った道なので、手を掛ける人間が居なくなってしまった今となっては、廃道化も致し方無い。越沢沿いに遊歩道が延びていて、「七橋自然遊歩道」の看板がある。荷物が少なければ鳩ノ巣駅方面に行ける、と記してあった。とりあえず其れに従って歩いていった。程無く、大きな滝が落ちていく其の上に、金属製の材料で作られた吊橋が渡っていた。

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二歩、三歩と踏み入れて、揺れる橋の様子を見た。大丈夫なようにも見えるが、判らない。眼下には、遥か下方に滝壺が白い飛沫を撒き散らしている。其の高度感と、激流の迫力を見るに連れて、吊橋の繊細な造りに不安を覚えた。対岸の遊歩道の先を見ると、木製の頼り無さそうな橋が見えた。遊歩道の名前から察して、其の後に現われるであろう五ヶ所の橋を想像した。十中八九、途中で諦めて、引き返してくるであろう自分の姿が容易に想像できた。

夢の跡地のようなバットレスキャンプ場から、来た道を引き返した。鳩ノ巣へ向かう山道は、途中で林道建設の為迂回路が設定されていた。真新しい林道を見下ろす山肌の中腹から、建設現場を眺めた。森林が無慈悲に切り倒され、土が削り取られている有様が生々しく感じられた。

山奥で、既存の林道を見ても、何の感情も抱かない。しかし、そんな林道も、其れが出来る前は、人々が黙々と歩いて往来してきた自然の道が在った筈である。林道と云うものが、其のような木々や土を破壊して、出来上がったものなのだと云うことを、今更のように実感した。

何度も歩いた大楢峠への道の記憶と、バットレスキャンプ場の廃墟の様が、脳裡を駆け巡る。私は通りすがりの、山歩きの徒であり、変わり行く山野の断片を記憶しながら歩く、感傷的で、ちっぽけな存在である。そんな、自分でも判然としない敗北感のようなものに支配されながら、私は下山の途に、戻っていった。

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コメント

鳩ノ巣からではなく、古里からというのがおもしろいな。
寸庭~坂下の道は、詳細図に載せて欲しいっすね。

林道がどこまで延びるのか気になるなあ。

キャンプ場の跡地もおもしろそ~。
吊橋が通行禁止になる前に歩いてみた~い!
今後の山歩きの参考になりました。
ありがとうございま~す。

コメント戴いてたのに気づかず放置してしまいました。

概念図をアップして気づきました (^^;

すみませんん・・・


越沢林道、どこまで作るんでしょうね。
普通に考えたら大楢峠まで繋いで海沢線までとかでしょうか。

当たり前のようにあった登山道が、こうして過去の記憶の産物になるということを実感しました。

ずっとあとになって、若い人に、昔の大楢峠は・・・などと、
エラソーに語ったりしちゃいそうです(笑)

越沢バットレスキャンプ場のオーナーが作った「けもの道コース」
一度だけ登りましたが、バットレスのちょっと脇を、するすると金毘羅神社のちょっと先あたりに登りつきました。藪だらけになって残念ですが、草刈セットで行けば再開拓できるかもしれません。

七橋自然遊歩道、吊橋、なんか怖かったです。
かずさんなら楽勝で行けるでしょう。
ザイルで繋がってたら行けるかもしれません。
どんだけ臆病なんでしょう(笑)

お疲れ様でした。
元バットレスキャンプ場管理人Jrです。
けもの道コースはわかりづらいですが、最近でも利用される方はまだおられるようです。暫く標識の方向にある谷沿いに上ると鎖場があり、それを登ると金毘羅山に至る小道があるはずです。
けっこう体力といいますか、怖い思いをしますのでご注意ください。
七橋自然遊歩道も健在で、吊り橋はロッククライマーの方がよくキャンプ場経由で渡られています。バットレスより少し下流に進むと、金属製の階段を設置してあり、そちらからも金毘羅山の上(バットレスの頂上付近)に登れます。
金毘羅山の頂上より岸壁と反対側には滝を眺めるルートもあります。
(モノレールや管理棟は定期巡回・管理や資材の搬出入、救急搬送用として現役です。)

次回機会がございましたらぜひ散策してみてください♪

元バットレスキャンプ場管理人Jr様、

コメントありがとうございます。
読んで戴けて嬉しいです。
けもの道コース健在なのですね。
私が訪れた時は繁茂していましたが、
秋以降なら大丈夫そうですね。
あの急峻に鎖や梯子が渡してあって、
短時間で絶壁の上に辿り着ける、
すばらしいコースだなと思いました。
七橋自然歩道、ぜひ歩いてみます。
ご助言ありがとうございます!

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