« 西吾野駅周縁を巡る尾根・虚空蔵山(前編) | トップページ | 井戸沢尾根からトバノ岩山、そして天地山の彷徨。(前編) »

西吾野駅周縁を巡る尾根・虚空蔵山(後編)

Kokuzo




2013/4/6

西吾野駅(7:15)---山之神---340mピーク---三社峠---410mピーク---418mピーク--- 「パノラマコース」登山口---石地蔵---高山不動---虚空蔵山---志田---三社峠---西吾野駅(13:30)

Kokuzo1

関東地方全域に暴雨風の予報なので、一般登山道に入ってからも、誰とも出会わない儘、高山不動に到達した。天候は至って平穏であるが、嵐の前の静けさと云えなくも無い。時刻は未だ午前十時半である。関八州見晴台から飯盛峠へ向かうには充分な余裕がある。しかし、何とも云えない疲労を感じる。不穏な低気圧が神経に障る、そんな気分だった。

天候が悪化するのは明白であるし、西吾野駅の裏山を周回できたことで満足したから、もう帰りましょう。私は、自分の疲労を悪天予兆の所為にして、kz氏に提案した。だが、最終目的地が高山不動では恰好がつかない。何処か明確なピークに登ってから下山したい、其れが彼の考えであることは承知していたので、此処から程近い処に在る標高618.8mのピーク、虚空蔵山を提案した。kz氏は間髪入れずに賛同して呉れた。

虚空蔵山の位置をよくよく見ると、昭文社の登山地図には実線が引かれていない場所に在る。周辺には登山道が巡っているようだが、三角点のポイントは少しだけルートから逸れた処に在る。未知の山道に惹かれて歩く我々に、合点のいく目的地であると云えなくも無い。不穏な天候で早く帰りたいという共通の心裡も相まって、我々は虚空蔵山を目指した。

Kokuzo2

高山不動を通る車道は蛇行して勾配を登り、奥武蔵グリーンラインへと繋がるのだが、其の途上に虚空蔵山を含む尾根の、標高600m辺りを通過する。虚空蔵山への行程は、車道を登ってから、尾根に侵入して下り、途上のピークに至ると謂う変則的なコースになる。境内を出て舗装路を登ると、道は大きく南に向かってから、ヘアピン状にカーブして北上する。其の突端から山に入った。鬱蒼とした雑木林の中に分け入るような感じで、山に登ると謂う雰囲気ではない。

直ぐに瘤状のピークが現われた。登り詰めたら、もう着いちゃったのと、kz氏が云うが、此れは隣接する610m圏峰で、もうひと登りすると、山腹に鎮座する高山不動尊が見下ろせる、好展望の露岩道を経て、虚空蔵山に着いた。山頂には古びて苔に塗れた三角点が在り、トタン壁で覆った小屋の中に、仏像を刻んだ石碑が祀られていた。舗装路から逸れて、直ぐ近くに在るとは思えない程、静寂に満ちた秘境のような頂上である。

Kokuzo3

転進となった目的地が存外に良い処であったから、もう満足して下山の途に就くことにした。不思議なことに、虚空蔵山から降り始めた途端、空は暗くなり、轟々と不穏な音を立てるようになった。風が急激に強くなってきた。虚空蔵山の南へ下り、直ぐに登山道に合流した。志田集落に向かって降りていく尾根を辿る登山道を暫く歩いた。当初は此の先から別れる、名も無く地図にも道が載っていない尾根を辿ろうと、色気を出していた。しかし、吹きつける強風が辛く、何時迄も尾根の側面を辿る登山道を歩いて風を除けていたら、其の儘下山してしまった。

集落に着いたら、山上の強風が嘘のような静けさだった。曇天の下で、色とりどりの花が咲いている。ぽつりぽつりと、雨粒が落ちてきた。集落を流れる川を渡って、ふたたび山道に入った。此処からは、あじさい館への案内標に導かれて、小さな尾根を越していく道を歩く。斜面を捲いていく静かな道に、民家が点在している。古くからある吾野への生活路らしく、墓地や古びた神社もあって、何とも云えない趣がある。

Kokuzo4

山桜の咲く美しい集落に降り立った。高山不動から降りて来た舗装路と合流したら、其処が大窪の集落であった。止んでいた雨が、また降り始めた。此処から大久保峠を越えて行けば、あじさい館、そして吾野小学校へと繋がる古道があるのだが、我々は舗装路を高山不動方面に逆戻りする。最後の悪あがきのようだが、ふたたび三社峠を目指して、西吾野駅への最短ルートを試みることにしたのである。

舗装路を戻り、送電線の下を越えると、左側に細い道が別れていて、真新しい道標には、三社・国道299号と書かれていた。立派な道標が不安になる程、三社峠への行程は鬱蒼とした谷間を辿る道で、独りで歩くには心細くなるような雰囲気である。kz氏とふたりで、そんな峠道を黙々と歩いていると、いにしえの旅人になったような気分になる。奥武蔵の民衆が歩いてきた足跡を、丁寧に辿る旅。そんな目的の山歩きをしているかのようでもある。などと考えて歩いていたら、本日二回目の、三社峠に戻ってきた。

Kokuzo7

疲れたねえ。いい加減、一杯やりたいですな。思うが儘に疲弊感を漂わせた言葉を交わして、我々は最後の山を越える為に出発した。今朝歩いたばかりの、410mピークを左にトラバースしていく道を辿り、西吾野駅周縁の尾根に向かう。雨に濡れた枯葉も相まって、崩れそうな捲道を慎重に歩く。漸く尾根に復帰して南下すると、西吾野駅最短コースが別れる地点に到達した。

尾根道は明瞭だった。密度の濃い杉林に覆われて薄暗いが、天候の所為もあるかもしれない。そして、いよいよ西武鉄道の隧道の上に差し掛かった。樹間から覗くと線路が見える。視線を上げたら、西吾野駅が、直ぐ其処に在った。此れで周縁を巡る旅が終わり、尾根を真直ぐに降りていく。国道から少し入った墓地に着いた頃には、雨が本格的に降り始めていた。人影の無い西吾野駅前の山桜が、誰の為でもなく咲いている。其れが無性に、美しいと思った。

Kokuzo6

付記

「不動堂の南の618.8mの三角点の置かれる山は虚空蔵山で、これは不動尊の周囲に神明大神、将軍地蔵、十一面観音、虚空蔵菩薩を勧請したものの一つで、昔は女人禁制の山でした。(中略)昔はここに池があり、どんな旱天にも冷泉をたたえていましたが、ある時女人禁制のおきてを破って、一人の女が登ってからは水がなくなってしまったといいます(後略)」
『増補 ものがたり奥武蔵 伝説探訪二人旅』 (神山弘・新井良輔)岳(ヌプリ)書房刊 (1984)に拠る。

kz氏のHP「悠遊趣味」のblogから転載しました。
「虚空蔵山の由来」

別記

2013/4/10(登山詳細図踏査)

軍畑駅(8:30)---高源寺---砂防ダム入口---常福院---高水山---岩茸石山---惣岳山捲道---沢井駅分岐---送電鉄塔---沢井駅(15:00)

2013/4/14

高麗駅(8:40)---日和田山---高指山---物見山---北向地蔵---ユガテ---飛脚道---東吾野駅(13:30)

2013/4/20

初狩駅(8:40)---藤沢---桧平---滝子山---鎮西ヶ池---曲り沢峠---オッ立---景徳院---甲斐大和駅(15:40)

2013/4/24(登山詳細図西丹沢踏査)

寄---水源林管理棟ゲート---檜岳南東尾根---檜岳---檜岳南東尾根---750m---林道---水源林管理棟ゲート

« 西吾野駅周縁を巡る尾根・虚空蔵山(前編) | トップページ | 井戸沢尾根からトバノ岩山、そして天地山の彷徨。(前編) »

奥武蔵」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1243257/51808394

この記事へのトラックバック一覧です: 西吾野駅周縁を巡る尾根・虚空蔵山(後編):

« 西吾野駅周縁を巡る尾根・虚空蔵山(前編) | トップページ | 井戸沢尾根からトバノ岩山、そして天地山の彷徨。(前編) »

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

today

  • one day

twitter

  • naname's twitter
無料ブログはココログ

最近のトラックバック