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寂ショウ尾根から滝子山(前編)

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2010/04/018


笹子駅(8:40)---吉久保---寂ショウ庵---滝子山---曲り沢峠---景徳院---甲斐大和駅(15:30)


毎週末に山行きを敢行する偏執ぶりにはやはり恐れ慄いて居るのだろうか。仲間達は花見には嬉嬉として参加するのに、山登り故の高尾駅集合には迎合して呉れない。今日もMと私の二人だけである。此の一週前には久しぶりの鷹ノ巣山へ稲村岩尾根を果敢に登り、石尾根を延々と奥多摩駅迄歩いたばかり。今回は兎にも角にも笹子駅から出発し、甲斐大和駅前居酒屋で乾杯が目的という具象的な意図が在るのだけれど、此れは専らMの欲求に過ぎない。私は未だ登ったことのないあの端正な滝子山に行きたいと提案した。


案の定というか、Mは笹子駅から滝子山へ登るには甲斐の国から遠ざかってしまうという理由に拠って、初狩駅から登るという案を提示するが、私は破線で記されたルートの寂ショウ尾根に興味がある。しかし、マイナールートを極度に忌避する傾向の在るMに対しては提案し難い案件である。


寂ショウ尾根は『山と高原地図・大菩薩嶺2009』に於いて破線で記され「上級者向き」という曖昧な警告を発して居るが、インターネットのブログを検索してみれば、其れ程顧みられない道とは思えない位、山行記を読むことができる。私は其等の情報をメモして、中央本線小淵沢行き電車の中でMに対する説得を試みるが、案の定というか、案の定ばかりなのだが、Mは完全に否定的な態度を崩さない。教条主義的に、書類が揃ってないので受け付けられません、と、役所の窓口が言うような態度ではなく、担保が無ければ融資は難しい、というようなことを遠まわしに言う銀行マンの態度に近いような気がする。


初狩駅を過ぎた頃には、笹子駅から一応は寂ショウ尾根を目指すことにするが、迷うことがあったら直ちに正規ルートである浜立山を左旋回する沢沿いに変更する、という担保を約束する、ということで議会は一応の着地点を見出すことに落ち着いた。登山口に至る手前の手前で私もMも、少し疲労感を漂わせつつ、電車は笹子駅に到着した。


甲州街道を逆戻りして吉久保に向かう。穏やかな好天の笹子は、まるで鳥沢の集落を歩いている時のような長閑さだった。其れ程笹子の印象は曇天で鬱屈したものであって、とりわけMには、角研山のトラウマから抜け出せない様子が窺えるから、私は春の陽気を殊更有難く感じた。


丁寧な道案内板のお陰で、吉久保集落に入り、稲村神社の桜は今が旬と思う程、重厚に咲き乱れていた。中央道を越えて、桜森林公園に至る。神社と違って、此方の方は風に吹かれた花弁が沢沿いに敷きつめられて居て、短い春の終わりを感じさせる。人工的な舗装路が、徐々に廃れていく気配になって、寂ショウ庵への分岐に着いた。勾配を轍が導いている様子を見て、Mも漸く得心する様子になったようだ。私は、強くなってきた日差しと緊張感で、体が汗ばんできた。


程無く寂ショウ庵と思しき建物が現われた。水分を摂り休憩しようと思うが、周辺にあるベンチや椅子が、如何にも私有地という雰囲気で落ち着かない。寂ショウ尾根に関する廃れた案内板がある。少しの休憩で出発しようとしたところで、後方から単独男性がやってくるのが見えた。我々は寂ショウ庵の敷地を真っ直ぐに進んで出発した。


雑木林が現われ、中に入って行くが、踏み跡らしきものが無い。見通しが良いので構わず進むが、次第に不安感が襲ってきて、とうとう立ち止まって互いに顔を見合わせた。


言わんこっちゃない、というのは言いっこ無し。そんな感じで、諦めの境地に陥る迄時間はかからなかった。踵を返して寂ショウ庵へと戻ることにした。其の途端、右の方に、件の単独男性が歩いて行くのが見えたので、慌てて駆け出した。男性の許に近づいたら、明瞭な登山道が現われた。会釈して、寂ショウ庵から何も考えずに直進したら迷いました、と話したら、登山道の入口という看板がありましたよ、と、別に嘲弄するような感じではなく、淡々とした口調で言われてしまった。


意気消沈した私とMは、単独氏が歩いていくのを見送りながら、やや気まずい思いで停滞していた。道が明瞭になり、他の登山者も居るので、もう不安は無い。改めて、寂ショウ尾根を行き滝子山を目指すことに決まった。気を取り直して再出発し、歩いて行くと、直ぐに件の男性に追いついてしまった。


彼は直ぐに道を譲りながら、久しぶりだからゆっくり行きますよ、と言った。私は、気恥ずかしいという気持ちと、ふたたび湧き起こっているに違いない、寂ショウ尾根に対するMの懸念を背中にひしひしと感じていて、俯きながら、足早に歩を進めるばかりだった。


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