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梁川駅から扇山(後編)


2010/02/11


梁川駅(8:30)---犬目---扇山---梨の木平---鳥沢駅(14:30)



辺鄙な土地にしては舗装路や交通標識などが綺麗で、不自然な程人工的に見える大田から犬目への道は、ゴルフ場の域内に入ってからは、さらにその感が増してきた。そぼ降る雨の中、誰も居ないフェアウェイを眺めながら、とぼとぼと歩き続けた。

時折通り過ぎる自動車の轍は、行く手を遮るかのように霧を醸し出す。何が愉しくて、こんな処を歩いているのかと思う。


県道に突き当たり、漸く犬目に到着した。民家の軒先で雨宿りしながら、宝勝寺の階段の彼方に、喪服姿の人影を見た。

雨は其れ程勢いは無いが、寒さで体力と気力が段々と減退していくような感じだ。それでも少しの休憩で、ふたたび歩き始める。車道を辿り、直ぐに登山道の入口が現われた。


扇山への序盤は、まるで切り通しのような、土が抉られたような壁の中を登る。そして徐々にジグザグに、本格的な登りになった。泥濘の所為で足元ばかりを見ながらひたすら歩き続け、道標が現われた。下る道が分かれていて、其方に君恋温泉の大きな看板が立っていた。温泉にでも入って麦酒でも飲んだら、という妄想が思わず脳裏を過ぎるが、勿論そんなつもりは無い。しかし、Mは私とNを見て、もう諦めて温泉に行くか、と言う。言葉に出されると思考が消え失せて、そうしちゃおうか、と腰が砕けそうになる。Nは無言だが、明らかに温泉でよいのでは、という表情だ。一瞬、皆が牽制して無言になったので、私は、やはり最後まで行こうと言った。何故だか素直に、何事もなかったように、三人はふたたび扇山へ向かって出発した。


時折木々の遮りが途切れても、辺りは真っ白に煙っていて、折り返しながら登る道が、まるで同じ処を何度もぐるぐると廻っているような気がした。そうしているうちに漸く、犬目丸からの尾根に合流する地点に辿り着いた。遠くに権現山の広い壁が見えるであろうという方面も、ただ真っ白な靄に包まれていて何も見えない。空気が刺すように冷たい。


緩やかに登ると、枯木が凍って樹氷になった。

傍らに萎れたまま枯れた草木も凍っていた。

立派な倒木を避けて一息に登り、山谷からの道と合流した。


目を見張るほど美しい樹氷を湛えた木々が静かに、扇山の頂への入口へようこそ、と謂っているような気がした。


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コメント

最新版のエアリアに載ってる道だとは知りませんでしたよ~。
なんだか昔の僕を見ているようです。
すんなり迷わず登ってしまうより、苦難の果てに山頂があると、ちょっと違った感じで山頂に立てるでしょ~?
迷った後、山頂に立った時の開放感…。
何度か経験するとやみつきになるかも?

僕は、迷った(つらい)ほうが印象に深く残り、後であんな経験したけど、良かったのかも?と思います。
今じゃ、迷うことを楽しんでいます。
迷わず登ってしまうと、なんか物足りない気分。
僕は、迷うの大好きです。
生きてるってことを実感できるからかな~?
わざわざ自らすすんで危険な目にあいに行くのも変な話しですが、ドキドキワクワクの冒険心で山を楽しんでいます。
nanameさん、今は、迷うことがつらいかもしれないけど、この経験は無駄じゃないですよ。

迷いの中にドラマがあるね~。読んでるだけでドキドキしました~。
君恋温泉での心の葛藤もおもしろかったです。
またまたリンクありがとうね~。

投稿: かず | 2010年2月16日 (火) 18時25分

以前は載ってなかった道なのですか?
注意深く歩いていたのに呆気無く迷ったので吃驚しました。

仰せの通り、迷うことで自分の五感が研ぎ澄まされるというか、パニックに陥りそうになる自分の意識をなだめつつ、真剣に理性を取り戻そうとしている自分に、生きているという実感が湧きあがってくるような気がします。

補記の通りですが、かずさんの記録を発見した時は驚愕でした。ちゃんと書いてあったじゃん! そんな感じで脱帽でした。

HPにリンクありがとうございます。
また掲示板にお邪魔しますので、よろしくお願いします。

投稿: naname | 2010年2月17日 (水) 04時40分

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