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笹子駅から1377地点(角研山)経由の本社ヶ丸《前編》


 2010/1/31


笹子駅(8:40)---庭洞沢橋---黒野田林道---送電鉄塔葛野川線30---角研山---本社ヶ丸---造り岩---清八峠---清八山---清八峠---変電所---追分---笹子駅(16:10)


気象予報によれば寒波襲来が近そうなので、其の前にどこかに登っておくか、ということになり、Mとあれこれコースを検討していたが、妙案も浮かばないので、かねてから気になっていた、本社ヶ丸の項で記した、1377地点の謎を解く旅を思いついた。


昭文社刊「山と高原地図24『大菩薩嶺』2009」では堂々と赤い線で記されている、笹子駅から1377地点までの登山道。昨夏の本社ヶ丸からの下りで、見事に繁茂した藪で覆われた鉄塔にぶち当たり、敗走を余儀なくされたが、冬枯れの今なら、あの鉄塔を目指して、笹子駅から歩けるのではないかと思う。


当然、そんな思いつきは自然と出たものではなく、愛読している或るホームページ(末尾に詳細を記載)に、笹子駅からの道のりが写真入りで克明に書かれていたのを発見したからだった。角研山北尾根というあの鉄塔のある道を登って角研山に、そして本社ヶ丸を目指すことにした。


中央本線大月行きの電車はことのほか空いていて、ボックスシートにMと向かい合い、車窓を眺めながら今日の行程を説明する。件のHPから書き写したメモを見せる。


「船沢橋経由、鶴ヶ鳥屋山の指導標、T字路を右折

辰巳沢橋を渡る。次に庭洞沢橋を渡る。

「角研山北尾根入口」の指導標。

送電鉄塔大勝線50号。

庭洞山(1000.6m)赤い三角点。

黒野田林道に出る。指導標は左だが右へ。

黄色い標柱「30号鉄塔に至る」と表記。

プラ階段を登る。

黄色い標柱で尾根。「巡視路・登山道至笹子駅」の表示。

「送電鉄塔葛野川線30号」に到達。


大月駅では、朝日に照らされて輝く岩殿山を眺めながら、後続の小淵沢行きが来る迄随分待たされる。私は今日の行程に内心興奮しており、緊張していた。概略は分かったような気になっているが、実際は滅多に歩かれなくなったルートである。どんな険しいポイントがあるかわからない。私は普段使用しないスパッツを、乗り込んだ小淵沢行きの車内で装着した。


相変わらず山翳で暗い笹子駅に降り立ち、準備を済ませて、右手に歩くと、JR運転士訓練用プラットホームを見ながら、舗装道路を西へと進む。辰巳沢橋が現われ、庭洞沢橋を越える。予定通りだ。右に山小屋風な建物が見えてきて、「角研山北尾根入口」の指導標が見えてきた。


階段を登り、貯水タンクの横を通り、枯れた沢と古びた堰を右に見ながら傾斜を登っていく。そしていつしか、傾斜は急になり、踏み跡どころか、道もない、ただの山肌を必死になって登り始めていた。ところどころに生えている枯れ木の幹を掴まないと、たちまち滑り落ちてしまうくらい急な崖になっていた。


「これは道じゃないな」と、Mがいまさらのようにつぶやく。私は、目の前の足場と、掴まることのできる木に集中して登り続けていた。息があがり、木に寄りかかって休む。後ろを振り返ると、Mの姿が見えない。

背筋が冷たくなったような気分で、眼を凝らしてMを探すと、左に大きく逸れて登ってきている。かなり手こずっている様子だ。私は、斜めに生えている木に、支えられるようにして寄りかかって、Mが近づいてくるまで待っていた。

とりあえず無事を確認して、ふたたび崖を登り始める。時々、振り返ってMを確認するが、一回だけ、振り向いた瞬間に重力を失ったような、宙に浮いたような感覚になった。落ちる、と気づいた瞬間下肢に力を入れて、どうにか踏みとどまった。


山肌にへばりついて、彼方を見上げると、木立が並ぶ尾根が見える。もう少しだと言い聞かせ、今度は無心に、スピードを上げて、だが慎重に、登り続けた。

崖を登りきって、なんとも穏やかな尾根の上に辿り着いた。Mはなかなかやってこない。崖を見下ろしても、なかなか姿を確認することができない。それだけ急峻だったということだろう。Mがやっと登りきった。無言で座り込んで給水して、立ち上がる気配を見せない。


小さい尾根の反対側を見ると、舗装された林道らしきものが見えて、遥か向こうからは、甲州街道からの自動車の音さえ聞こえる。五万分の一の地図を見ても、自分たちが何処に居るのか全く判然としない。尾根はとにかく南の方向に向かっているので、枯れ枝を掻き分けながら進む。それでも充分歩きやすい道だった。


どう考えても正規のルートを辿っている感じがしなかったが、それでも足元に時折姿を現わす赤い石標を見ると安堵する。しかし、道は徐々に薄暗くなっていき、前方に急峻が聳えているのが見えてきた。先程の崖ほどではないが、倒木が散乱した傾斜のきつい登りだ。今度はMが先になって登り始める。垂直に倒れている木に縋り、ストックをバネにして少しずつ登っていく。稜線と、木立から覗く空を遠く見上げる。最早道ではなくなっていた。


登りきった場所は、展望が開けた登山道が横切っていた。送電線がうっすらと横切っているのが見える。道は右手から左の方へと緩やかに上がっている。左斜め前方に、こんもりと聳えたつ山が見える。左手に、歩を進めた。庭洞山なのか。しかし予定では送電鉄塔大勝線50号が先だ。既にまともにルートを辿っていないのに、頭の中では予定されていた知識と、目の前の現実を合わせようとしている。二度に渡って山肌をよじ登ってきた疲労に困憊して、茫然としながら足を前に運んだ。


広がる空の下、枯れた藪が倒れて開かれた道を行き、間もなく林道が現われた。

黒野田林道は、天国のようなのどかさだった。


帰宅してから調べた結果、HPと書き写したメモを照らし合わせた。

『左下に庭洞沢を見ながら左岸を進むと、前方に堰堤が見え、木橋がかかっているが、「自然を守ろう」の白い標柱の矢印に従い右折する』

HPから引用した。私のメモは、「角研山北尾根入口の指導標」の次に、いきなり「送電鉄塔大勝線50号」とだけ書いてある。堰堤は覚えているが、沢は右に見ていたような記憶だ。白い標柱は、メモし損なったため、全く眼中に無かった。この時点で道無き道というか、崖を行く決死行が確定していたのだった…。


補記

文中に記した、愛読しているHP『悠遊趣味』です。

マイナーなルートを行く山日記は、プロセスが丁寧に記されていて、写真も大事なポイントできちんと掲載されていて、本当に分かり易いです。今回見逃した「白い標柱」もちゃんと写真がありました。それにもかかわらずこの有様なので、自分で自分に驚いています…。

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